患者の経験

Aさんの場合

 肺がんで手術をうけ集中治療室に入室_(当時60歳代の女性)

 私は、咳が止まらないという症状があり病院に受診したところ肺がんと診断を受けました。最初はがんであると告知を受けてショックでしたが手術で悪いところが取り切れると聞き安心したのを覚えています。担当の医師には手術の説明を何度も聞きましたが、なかなか頭に入ってこず、何度も同じ質問もしていたように思いますがそのおかげでわからないところを解決し、手術を迎えられました。治療の途中で胸水が溜まってしまい、途中で新たに胸にドレーンという管が入ったり、皮下気腫ができたりしましたが無事に退院することができました。

 当時は肺がんの5年生存率を調べてはあまり予後が良くないかもしれないと考えて不安も大きかったですが家族に自分の気持ちを話したり相談して解消させていました。「もしものときは延命治療はしたくないよ」っていう気持ちも夫や子供に伝えました。

Bさんの場合

 脳梗塞で緊急入院し集中治療室に入室 (当時60歳代の男性)

 私は、休日に自転車で買い物中に急にめまいと力が入らない感じがしてゆっくりと倒れたのを記憶しています。近くに歩いていた人が救急車を呼んでくれて、病院に搬送されました。これ以降、集中治療室に2〜3日くらい緊急入院したようですが記憶はありません。記憶があるのは、一般病棟に戻ってからです。なんとなくずっとぼーっとする感じがありました。この件で私は右半身に軽度の麻痺が残りました。また、相手の言葉は理解できるのですが自分が伝えたいことをうまく言葉で伝えることができなくなりました。仕事をしていたので、これ以降仕事もできなくなりショックでした。

 なんとかリハビリテーションを続けて仕事に復帰できるように頑張りました。身の回りのことが少しづつ自分でできるようになり、自分の気持ちも立て直すことができました。私はなんとか脳梗塞後も意識を保ち、自分のことを自分でできるようになってきましたが、次もまた同じ病気で入院することがあり意識がなくなるようであれば治療はしたくないと思っています。

Cさんの場合

 心停止後に緊急で集中治療室に入室 (当時70歳代の男性)

 私は、友人と居酒屋で飲んでいる途中で心停止を起こしました。これ以降の私の記憶は全くありません。家族や友人の話によると、救急外来で処置を受けて集中治療室に入院したようです。原因は心筋梗塞でした。担当の医師から私の娘へ「心臓の手術が治療の選択肢としてあるがどうしますか?」と尋ねられたようです。私は娘に「延命治療はしたくない」と常々伝えていたので、娘はだいぶ悩んだようです。そして、叔父や担当医にそのことを伝えてくれて、みんなで一緒に私の治療を考え、今心臓の手術を受けることは延命治療ではないと判断し、手術への同意(代理意思決定)をしてくれました。

この手術後自体は無事成功しましたが、回復には時間がかかり、3ヶ月ほど急性期の病院へ入院後、その後リハビリ病院に転院し2-3ヶ月くらい入院しました。集中治療室で娘や友人と会話をしている自分の動画を退院後に見ましたが、私自身病気を発症して3ヶ月くらいの記憶が全くないんです。不思議ですよね。

 今は、仕事を辞めてマイペースに暮らしています。自分が受けた心臓の手術が延命治療だったかどうかは自分自身で今考えても答えが出ません。でも手術を受けたことに後悔はないし、治療を受けられて今生きられてとても幸せだと思っています。治療についての詳細な内容や選択肢に関しては、正直よく理解できていないところもありますが、もしまた心臓の調子が悪くなったら、次は手術はせずに、カテーテルで治療できるところまでがいいなと娘や主治医には伝えています。